Ryzen Threadripper 3990X (通称スリッパ)
AMDから、64コア128スレッドのロマンあふれるCPU Ryzen Threadripper 3990X(通称スリッパ)が2020年2月8日に発売になりました。半導体の製造プロセスが7nmの線幅で作られて、MAC PROで使われているCPU Intel Xeon W 28コアの2.2倍。微細プロセスのおかげで、発熱量は、1.36倍のTDP=280Wに抑えられました。この280Wを空冷ファンで冷やすことになります。
安全装置とアンロック
最近のCPUには、温度センサーが付いていて、危険温度(使用可能な最大温度)になると、 CPUのクロックを下げて消費電力を下げ、保護する機能が付いています。CPUが100%の能力を必要とした時、温度が上がるまでの一瞬だけ最大パワーにして、体感スピードを上げる事ができます。アンロックではそのような、最大ブーストクロックまでスピードを上げれたり、CPUコア電圧の設定を上げてよりスピードを上げるようにする機能です。
空冷と水冷
CPUの冷却方法には、大きく分けてファンを付けた空冷と、水で冷やす水冷があります。昔はヒートシンクだけで冷やせるほどCPUの発熱量が少なかったです。もっと昔CPU Z80なんかは、冷やす必要がなくてプラスチックのケースの中に入っています。また、液体窒素で冷やすオーバークロッカーな人もいます。油冷?よく知りません。
空冷は、CPU表面に付いた金属から熱が銅パイプを伝ってファンで空気に移動します。金属や銅パイプは、比熱が小さく熱ですぐに熱くなったり冷たくなります。水冷は、比熱の大きい水で冷やすので、熱くなりにくいですが、冷たくもなりにくいです。またFANを2連3連・・10連と増やして風量を2倍3倍・・10倍にいくらでもできます。なので冷却に関しては水冷が有利です。ただメンテナンスと故障のし易さが悪いです。ロマン?
Ryzen Threadripper 3990X(通称スリッパ)の空冷クーラーはサイドフロー型 Socket TR4 CPUクーラーとして、価格.comで7種類売られていました。そのうち風量の数値の記載があるものだけ、リストアップしました。
- Thermalright Silver Arrow TR4 風量 130CFM
- COOLER MASTER Wraith Ripper MAM-D7PN-DWRPS-T1 風量 76.4CFM
- DEEPCOOL GAMER STORM Fryzen DP-GS-MCH6N-FZN-A 64CFM
- COOLER MASTER MasterAir MA621P TR4 Edition MAP-D6PN-218PC-R2 53.4CFM
各クーラーの後ろに付いている〇〇〇CFMが、最大風量です。 この値が大きいほど長い時間最大スピードでいられることになります。但し一般的に風量が多いと、そのファンが出すノイズも大きくなります。このくらいのクラスのファンになると、PWM制御で、CPUの温度が低い時は、回転数を落としてノイズを低減する機能が付いています。
ファンのサイズが大きいほど回転数が少なくて済み、ノイズが減りますが、サイドフロー型なのでファンの高さが高くなります。ファンの高さとケースの幅の選択を間違えると、私みたいにFANがケースに収まらないと言う事態になります。/(^o^)\ナンテコッタイ
風量の単位の変換は、下記の通り
1CFM = 0.0283m3/min = 1.7m3/hr
ファンの風量を求める式は、下記のサイトにありました。
Q(必要風量)=50xHa(発熱量280w) / ΔT(温度上昇値)
ΔT(温度上昇値)は、いくらにすればいいのだろう?
更に装置内インピーダンスの有無で曲線が変わり、Q値をグラフから求めるらしい。
Ryzen Threadripper 3990X(通称スリッパ)の仕様
AMD Ryzen™ Threadripper™3990Xプロセッサー | AMD
- CPUコア数:64
- スレッド数:128
- 基本クロック:2.9GHz
- 最大ブーストクロック:最大 4.3GHz
- L1キャッシュ合計:4MB
- L2キャッシュ合計:32MB
- L3キャッシュ合計:256MB
- アンロック:はい
- CMOS:TSMC 7nm FinFET
- パッケージ:sTRX4
- PCI Expressバージョン:PCIe 4.0
- デフォルトTDP/TDP:280W
- 最大温度:95°C
- *対応OS:Windows 10 - 64ビット版
- RHEL x86 64ビット
Ryzen Threadripper 2990WX(2世代目スリッパ)からの改善点
第2世代Threadripperの2990WXでは、メモリー制御周りの設計ですべてのコアにメモリがつながっていなくて、直接つながっていないコア間を通過するための処理時間が余計にかかり、そのためAdobe Creative Cloudなどでは、コア数の少ないインテルCPUに処理スピードで劣っていました。3990Xではそれが改善された設計になりました。そのため、クリエーター向けCPUとして宣伝されています。
参考資料
www.anandtech.com
殻割り
インテルのオーバークロック以外のCPUなどは、2012年頃から、CPUコアと金属カバー間が、ハンダ付けから高性能グリスに変わりました。それで殻割りに意味がありますが、AMDのCPUは、ハンダ付けで行われているので、ほとんど意味がありません。
まとめ
去年googleが量子コンピュータで、1万年かかる複雑な計算問題を、量子コンピューターを使い数分間で解いたニュースがありました。(まだ絶対零度の環境で動作させる必要がある)20年前 2000年には、AMDからAthlon、インテルからはPentium 4が生まれました。小学生に配られる富士通の「ARROWS Tab」の搭載CPUより劣ります。20年後の2040年には、このスリッパCPUがく●CPUと呼ばれるようになっていてほしいものです。
ではでは。